レバノン 中東

レバノンの旅 -3大観光地バールベック・ベイルート・ビブロス-

レバノンの3Bを制覇したい!

レバノン バールベック遺跡

レバノンの3Bとはレバノン国内の3大観光地バールベック、ベイルート、ビブロスのことです。

どこも古い歴史があってその歴史的魅力もそれぞれ違います。

この3Bを制覇したい、そんな気持ちに駆られました。

順番に見ていきましょう。

 

バールベック

シュトゥーラからセルビスに約1時間乗るとベカー高原にある町バールベックに着きます。

バールベックにはレバノン最大の見どころがあります。

 

セルビスとは?

レバノン ベイルート

セルビスとはミニバスのようなもので行き先が決まっています。

ワゴン車のセルビスが多いですが、乗用車のセルビスもあります。

行き先と料金を確認してから乗車し、降車時に運賃を払いましょう。

満席にならないと出発しないことが多いので、時間に余裕のない人は気をつけましょう。

 

バールベック遺跡

レバノン バールベック遺跡

この遺跡の名はフェニキア人の豊穣の神バールに由来します。

ここには最高神ジュピター、酒神バッカス、愛と美の女神ヴィーナスに捧げられた3つの神殿があります。

西暦60年頃にローマ帝国によって神殿の建築が始まりました。

ローマ神話やギリシア神話にまつわる神殿の中で世界で一番重厚で迫力があるのはバールベックの神殿だと思います。

旅先としてはあまり選ばれにくいレバノンにこれほどまで魅力的な見どころがあるとは思ってもいませんでした。

もちろん世界遺産です。

このページの冒頭にある画像はバールベック遺跡内にある記念階段から撮影したものです。

遺跡全体を見渡せるのでおすすめの場所です。

 

バッカス神殿 

レバノン バールベック遺跡

アテネのパルテノン神殿より大きくそして保存状態もすばらしいです。

バッカスはギリシャ神話ではディオニュソスにあたります。

オリュンポス12神の中で唯一人間の親から生まれました。

バッカスは太陽神ゼウスとセメレーという名の人間との間に生まれたのです。

酒神バッカスと言われますが、そのお酒はワインを指しています。

よって、ワインの神様またはブドウの神様と言われることもあります。

バッカスはぶどうの実から酒を造る方法を発見しました。

その後、バッカスはギリシア、北アフリカ、中東を渡り歩いてインドにまで到達し、ぶどうの栽培やワインの製造方法を広めました。

ここまで知ると、お酒の開発と普及に貢献した神という感じですね。

しかし、怖い一面もありました。

自分を神として崇めない者に対しては狂気をもたらしたり、動物に変身させたりしていました。

あるときは女性の娘達全員を死に至らしめることもありました。

そのため、人々からは畏怖の対象として見られていました。

 

ヴィーナス神殿

レバノン バールベック遺跡

長い年月を経て外観はほとんど分からない状態になっています。

ヴィーナスはローマ神話の菜園の女神ウェヌスにゆかりがあります。

ウェヌスはVenusと表記します。

これを英語読みしてヴィーナスと呼ぶようになりました。

先ほど「ヴィーナスはローマ神話の菜園の女神ウェヌスにゆかりがあります」と書きましたが、ゆかりがあるというより同じ神だろうと思った人もいるかもしれません。

でも、同じ神という表現は厳密には正しくありません。

なぜなら私たちの知っているヴィーナスは「愛と美の女神」であって「菜園の女神」ではないからです。

 

ギリシアとローマの神々

かつてローマ帝国が繁栄した頃、ローマ人はすでに栄えていたギリシア文明から芸術や学問などを取り入れました。

このときにギリシア神話も流入してきました。

しかし、既にローマには独自の神々が存在しました。

そこで、当時の学者達はギリシアの神々とローマの神々で似ている者同士を同一視することにしました。

たとえば、ギリシアの海の神ポセイドンはローマの海の神ネプチューン(ネプトゥヌース)と同じ神として扱うことにしたのです。

これによってネプチューンの逸話はポセイドンの逸話と同じ内容になりました。

ローマ帝国にとっては好都合でした。

ストーリー性に優れたギリシア神話をそのままローマ神話として利用したことで、人々の神々に対する信仰心を高めることができたからです。

さて、ローマの菜園の女神ウェヌスの話に戻しましょう。

ウェヌスは菜園の女神として崇められていましたが、特に神話がありませんでした。

そこでウェヌスにはギリシアのアフロディーテの神話を割り当てることにしました。

愛と美の女神アフロディーテの神話をそのまま割り当てたのですから、ウェヌスも愛と美の女神になりました。

愛と美の女神ヴィーナス(ウェヌス)の誕生ですね。

 

ジュピター神殿

レバノン バールベック遺跡

こちらも外観はほぼ分からず、残っているのは6本の大列柱のみです。

ジュピターはローマ神話の主神で、ユーピテル(JUPITER)の英語読みです。

ギリシア神話のゼウスと同一視されています。

 

ベイルート

地中海に面する「中東のパリ」

レバノン ベイルート

バールベックからセルビスに乗り、シュトゥーラ経由で首都ベイルートに来ました。

内陸をずっと旅してきて地中海まで辿り着いたのですが、その地中海に面するベイルートは他の中東の町とはまったく異なる様相です。

ベイルートは大航海時代にベネツィアと交易したことで商業都市として一躍有名になりました。

その後フランスに絹を輸出するようになったことで、逆にベイルートにはフランスの交易品や文化、文明が多く入ってくるようになりました。

ベイルートは中東のパリと称されます。

 

旧市街

レバノン ベイルート

レバノンは長い間内戦が続いていました。

そのため、ベイルートの旧市街も銃撃戦の場となって人々が離れていきました。

現在は修復されて古き良き旧市街には新しさも感じます。

とても素敵な街並みです。

中東のパリと呼ばれた由縁はこの街並みにありそうですね。

 

私が訪れたときは旧市街で結婚式が行われていました。

レバノン ベイルート

旧市街から離れて行くと、日曜日のせいかオフィス街には人がまったくいません。

人っ子一人いない中、撮影現場に遭遇しました。

近づいていくとレバノンの俳優さんに話し掛けられて握手を交わしました。

ドラマの撮影をしているそうです。

レバノン ベイルート

 

海岸通りを道なりに歩いてラムレッタル・バイダ(白砂海岸)へ行きました。

レバノン ベイルート 地中海

 

鳩の岩

ラウシェ地区まで行くと、地中海に二つの巨大な岩がそびえ立っています。

この辺りにはカフェやレストランなどが立ち並んでいるので人々が集まっています。

レバノン ベイルート 鳩の岩

 

ムハンマド・アミーン・モスクとハリーリ前首相霊廟

レバノン ベイルート

ムハンマド・アミーン・モスク

ベイルート旧市街でひときわ目立つのがムハンマド・アミーン・モスクです。

サマルカンド・ブルーのような鮮やかな色をドーム状の屋根に配しています。

ついつい写真が撮りたくなります。

 

ハリーリ前首相霊廟

上の画像ではムハンマド・アミーン・モスクに注目してしまいますが、手前にある白いテントのほうにも注目してください。

2005年2月にベイルートでラフィーク・ハリーリー前首相が暗殺されました。

ハリーリー前首相の車列に爆弾が仕掛けられて22名が犠牲になりました。

これをきっかけにレバノン国内の情勢は非常に悪くなりました。

それから年月が経ちましたが、街の中心にある仮設テントのような霊廟の中にハリーリ前首相の遺体が今でも安置されています。

白いテントには誰でも自由に入れます。

 

ホリデイ・イン跡

レバノン ベイルート ホリデイイン跡

画像の中心よりやや左側に写っているのがホリデイ・インです。

1974年に営業を開始したホリデイ・インは翌年から始まった内戦で爆撃を受け、すぐに閉鎖しました。

今でもホリデイ・インの建物は取り壊されていないので、その外壁に爆撃の傷痕を見ることができます。

 

キプロスに行きたい!

ベイルートで地中海を眺めていたら、ふいに「地中海に浮かぶキプロスに行きたい!」と思いました。

そこでベイルートの南にある港まで歩くことにしました。

船でキプロスまで渡れるかもしれないと考えたのです。

汗をびっしょりかきながら3時間歩き、ようやく港に着きました。

港はとても広く、キプロス行きの船を探すのは大変そうです。

そもそも港には貨物船が停泊していますが、客船が見当たりません。

また、人っ子一人いません。

港を歩き回った後で周囲に一軒しかないレストランを見つけました。

「これはもう聞いてみるしかない!」と思って入店しました。

「すみませんが、この港にキプロスに行く船はありますか?」

店員さんが私のために全員集まってくれました。

そのうえで「ここからキプロスに向かう船はありませんね」との答え。

……スマホを持っていない非文明的な旅をしている私はこのように無駄な時間と労力を費やすことがあります。

欲を出した私は初心にかえり、再び中東に目を向けることにしました。

ダウンタウンに戻ろうと再び歩き始めたのですが、途中で日が暮れてしまったので宿を探すことにしました。

 

ホテルで安全より優先したこと

選択肢のない中で泊まることにした宿の部屋はどこかの病室のようです。

レバノン ベイルート

シャワーがないので部屋にある洗面台で髪を洗い、濡らしたタオルで体を拭きました。

さあ、おやすみです。

しかし、暑い!

とにかく蒸し暑い!

エアコンはもちろんのこと、扇風機もありません。

何時間経っても眠れません。

策を出し尽くした私は「部屋の外はどうなっているんだろう?」とドアを開けてみました。

すると、とんでもない冷気で廊下が満たされています!

廊下には宿のフロントがあり、そこに従業員がいるのでエアコンがあるのです。

私は迷いました……安全のためにドアを閉めて朝まで蒸し暑さに苦しむのか、それとも快眠のためにドアを開けたままにするか……。

快眠を優先しました。

海外で部屋のドアを開け放しにするのは言語道断です。

でも、危険な目に遭っても構わないほど異常に暑かったのです。


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その後、すぐに眠れました♪

しかし、朝方に再び目が覚めました。

……おかしい! 暑い!!

ドアが閉められていたのです。

ドアを開けると、すぐ目の前の廊下のソファで従業員が熟睡しています。

私は「ここは譲れない」とばかりに再びドアを開け放しにしたのでした。

今度はきちんと眠れました♪

レバノン ベイルート

翌朝になって宿を外から見てみたら、2階は窓が割れていてテラスにはガラクタが積み重なっていました。

 

私はビブロスに向かうため、ベイルートのダウラに行きました。

バス乗り場周辺の風景です。

レバノン ベイルート

 

目的地に着くのは大変!

ビブロスまでは約1時間ほど掛かります。

ビブロス行きのバスだと確認してからバスに乗り込みました。

しかし、バスに乗って20分ほどすると運転手が「ここで降りなさい。そして、ビブロス行きのセルビスに乗りなさい」と言ってきました。

ビブロスに直行するバスではなかったのです。

こういうことはよくあります。

受け入れるしかありません。

しかし、降ろされた場所は日本でいえば高速道路のようなところです。

道路沿いに歩道もなければお店もありません。

いつまでもここにいるわけにもいかないので、猛スピードで走っているセルビスに手を挙げては「ビブロスの方向に行きませんか?」と尋ねました。

ようやく乗車できたセルビスも数十分後に「ここで降りなさい」と再び言われてしまいました。

仕方なく車道の脇をしばらく歩いていると、道路から20m下にある脇道にガソリンスタンドを見つけました。

ビブロスまで行くヒントをもらおうとガソリンスタンドへ向かいました。

そこのスタッフに「ビブロス行きのセルビスにはどこで乗れますか?」と尋ねました。

すると、そのスタッフが給油に来ていたお客さんに「セルビスに乗れそうなところまで連れて行ってあげてくれ」と頼んでくれました。

そのお客さんの車は真新しいBMW!!

中東を旅してきた私は服装も靴もホコリまみれでみすぼらしい姿でした。

乗せていただくのがとても申し訳なかったです。

レバノンまで来て、私は生まれて初めてBMWに乗りました。

さて、先ほどの高速道路のような道で車を降りました。

セルビスに停車してもらおうとするのですが、猛スピードで走り去って行きます。

しかし、しばらくすると一台のセルビスの運転手が私に気づいてスピードを急速に落とし、私の目の前で停車しました。

運転手が「どこに行きたいんだ?」と尋ねるので、「ビブロスまで行きたいです」と答えている時のことです。

どこからか急ブレーキの「キキキキキィ!!」という大きな音が響き渡りました。

とんでもなく大きな音ですが、車が見えません。

「一体どこで鳴っているんだろう!?」と思った矢先、目の前のセルビスに後ろから車が激しく追突してきました。

後ろの車をのぞき込むと、5人全員がぐったりしていました。

心配してのぞきこむと、命に別条がないようです。

私は別のセルビスに乗ってビブロスまで行くことができました。

ベイルートからビブロスまで1時間ほどの距離なのに、結局3時間以上掛かりました。

 

ビブロス

レバノン ビブロス遺跡

今から5000年ほど前に地中海交易で栄えたフェニキア人が世界で最も古い都市国家ビブロスを建設しました。

そのため、フェニキア人発祥の地と言われます。

アルファベットの元となるフェニキア文字もこの地で生まれたのでアルファベット発祥の地とも言われています。

聖書のことをバイブルと言いますが、これは書物を意味するビブロスに由来します。

ビブロスはギリシャ語のパピルス(紙)の同義語でもあります。

 

ビブロス遺跡

レバノン ビブロス遺跡

新石器時代の住居跡、紀元前2700年前の神殿、十字架の城などさまざまな時代の遺跡があります。

世界遺産に登録されています。

バールベック遺跡と比べれば見た目の満足度は低くなってしまいますが、歴史的価値は高いのでよかったら訪れてみましょう。


 

聖ヨハネ教会

レバノン ビブロス 聖ヨハネ教会

1115年に完成した教会です。

ビブロス遺跡の入口から150mほどしか離れていません。

ローマ様式アラブ様式が混在した美しい教会です。

レバノン ビブロス 聖ヨハネ教会

レバノンの女性は「ここで結婚式を挙げたい」と願う人が多いそうです。

たしかに同じ時間帯に教会周辺ではウェディングドレスを着ている花嫁を何人も見ました。

レバノン ベイルート

レバノンを訪れた後、陸路でシリア、ヨルダンを経由してイスラエルへ向かいました。

 

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