イグアスの滝があるブラジルの町フォズ・ド・イグアスはパラグアイとの国境に面しています。
夜8時に思い立ってパラグアイにちょっと行ってみることにしました。
町の人たちに地図を書いてもらい、いざパラグアイへ
国境まであと1kmくらいの所まで歩いて来ましたが、ここから先どの道を選べばよいかわからなくなりました。
道の先は街灯もなく真っ暗です。
私は一度明るいほうへと戻りました。
そこには小さなホテルがあり、その一階ではバーがあります。
バーのお客はかなりお酒に酔っていて外の道端に座り込んでいたり、大声を上げたりしていて少し近寄りがたい感じでした。
私はその中から数人のグループを選び、国境までの行き方を教えてほしいとお願いしました。
彼らは「今からパラグアイに行くのか?」と驚きつつも地図を書いてくれました。
地図を頼りに進んでいくと街灯のない暗いエリアへと入ってきました。
その先は漆黒の闇です。
光が1つもない、1m先も見えない暗闇です。
それでも歩くことにしました。
すると、どこからともなく急発進したような車の音が鳴り響き始めました。
タイヤと地面がこすれる音がとてつもなく大きい上に、暗闇の中で車の姿は見えません。
視界がゼロの状態ではどこでその音が鳴っているのか見当もつきません。
暗闇と大音響に心臓がバクバクしてきます。
10秒ほど過ぎたところで、後方からライトを点けていない1台の車が猛スピードでこちらに向かって来るのがかすかに見えました!
暗くてほとんど見えませんが、とっさに道路脇に逃げました。
車はスピードを落とさずそのまま走り去って行きました。
もし逃げなかったら、私はおそらく死んでしまっていたことでしょう。
この恐怖体験についてはあとで真相がわかりました。
ブラジルの若者たちがスリルを求めて暗い道をライトも点けずに猛スピードで運転していたのです。
ようやく暗闇を抜け出し、住宅街に入ってきました。
日本のように明るく安全な住宅街というわけではありませんが、さっきに比べれば十分に見えています。
「ここは歩きやすい」と思っていると、大型犬の野太い鳴き声が聞こえてきました。
鳴き声からして怖そうな犬です。
少し歩くと私はその犬に遭遇しました。
案の定見るからに凶暴そうです。
憎しみをもって私を見ています。
私は恐れおののきました。
ただ、その犬は民家の鉄製の門の中にいます。
「犬は門の内側にいるんだ。よかったあ」と胸をなで下ろしました。
・・・・・・と思った瞬間、その犬は柵をすり抜けて外へ走り出てきたのです!
「なぜだぁぁぁ!」
私はすぐに逃げ出しました。
しかし、犬は追いかけてきます。
狂犬病は世界一怖い病気
そんなに犬を怖がらなくても……と思った方もいるかもしれません。
しかし、怖がるだけの理由があるのです。
海外では狂犬病の予防接種を受けていない犬がたくさんいます。
狂犬病は他の感染症よりもずっと危険で、致死率100%と言われている最も恐ろしい病気です。
だから私は必死に逃げました。
カメラの三脚を振り回したり、大声を出したりして追い払おうとしましたが、犬はひるみません。
ここで死にたくはないと思いながら犬から逃げ続けました。
その住宅街のはずれまで来ると、犬はそれ以上追いかけては来ませんでした。
その次のエリアに入っても安心はできませんでした。
オレンジ色の薄暗い街灯が怪しく灯っていて犯罪の発生率がとても高そうなエリアです。
通りでふらついている男達が私に近づいて話しかけてくるのですが、ろれつが回っていません。
なので、何を言っているのか分かりません。
それでも、どんどん話し掛けてきます。
女性は一人も歩いていません。
危ない目に遭う前に私はその場を離れました。
ようやくブラジル側の国境に着きました。
喜びも束の間、そこで再び別の犬が私を追いかけてきました!
国境の検問付近を逃げ回っていると、出国審査の係官に助けられて難を逃れました。
ところで、日本テレビの「世界まる見え! テレビ特捜部」は海外のテレビ番組を紹介していますよね。
その番組内でブラジルとパラグアイの国境警備の様子をよく紹介しています。
私はその様子を見るたびに「あそこで犬に追いかけられて大変だったな」と思い出しています。
さて、ブラジルからパラグアイへは「友情の橋」と呼ばれる大きな橋を渡ります。
橋は1965年に開通し、長さは552.4メートルです。
すでに夜10時を過ぎていましたが、橋の上で何人かの人とすれ違いました。
橋を渡り切るとようやくパラグアイの国境です。
パラグアイの基本情報
正式国名 パラグアイ共和国
首都 アスンシオン
言語 スペイン語、グアラニー語
通貨 グアラニー
プラグ A、Cタイプ
ビザ 観光目的で90日以内の滞在ならば不要。こちらから最新情報をご確認ください。
シウダー・デル・エステ
入国すると、そこはシウダー・デル・エステという町です。
ちなみにシウダー・デル・エステは見どころがありません。
ブラジル人にとっては、国境を越えた先のシウダー・デル・エステは物価が安いので買い物に便利な町です。
さて、すでに夜の遅い時間帯です。
お店はすでにどこも閉まっているので私には物価の安さを感じる機会もありません。
ある食堂だけは営業していました。
食堂はとても薄暗く、5人くらいのお客さんが外の簡易テーブルで食べています。
先に進むと噴水のある大通りが見えました。
再びストリートチルドレンが……
静かな町に大きな声が聞こえてきます。
若い少年たちの声です。
その声のほうへ近づいて行くと、噴水で水浴びしている10名程度のストリートチルドレンの姿を発見しました。
物陰に隠れて考えました。
彼らに見つかったらお金やカメラなどをすべて失ってしまうと判断した私は、先に進むのを諦めてブラジルに戻ることにしました。
これほど1カ国の滞在時間が短かったことは他にないのですが、安全を第一にすることにしました。
ストリートチルドレンだけでなく、シウダー・デル・エステは夜間に麻薬や密輸などの犯罪事件も発生しているのでトラブルに巻き込まれないように気をつけましょう。
行きと同様に帰りのブラジル側も色々と危険でしたが、フォズ・ド・イグアスの中心までなんとか戻り、そこで見つけたホテルに宿泊しました。
ここの国境を越える時は夜間は避けましょう。
昼間ならずっと安全だと思います。
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